庄左ヱ門と伊助について

○はじめに

この二人については、長らく考察しようと考えてはいたのですが、考えていただけで実際は５年くらい放置していたという状況。
せっかくなので、今回、改めて真面目に考察してみます。

あくまで考察ですので、同人界の常識と１８０度違う方向に向かいます。
閲覧される場合は、ある程度覚悟をしたほうがよろしいかと。


そもそも、伊助と庄左ヱ門の関係は、ほぼ原作のみというのが事実です。
というのもアニメになると、庄左ヱ門は団蔵とガッツリな仲良しなので、そこに伊助が入る余地はそんなにありません。
当時は（自分も紛糾した）落乱３３巻の伊助の出番の削除されようも、要はそこまでして「伊助と庄左ヱ門の友情」をピックアップする必要がなかったからだとも考えています。

１７期においても、庄左ヱ門は団蔵と「たまには町へ遊びに行きたい」とか言っていたそうで、これは明らかに２人でよくツルんでいるのが示唆されていますし、実際１４期あたりで２人で海に遊びに行こうとする話があります。

個人的に、団蔵＆庄左ヱ門は原作もアニメの考察しどころ満載で、非常に面白いコンビだと思っています。
自分の知識をフル動員させたら、大学の卒業論文クラスまでいけそう、そんな勢い。
（実際は、しばらく考察から離れているんで、相当頭がサビついているんですけどね）

団庄コンビは別の機会で書くとして、今回は伊助ですよ。

○２人の体格差

意外にハッキリしています。

・落乱５巻p226〜p227。
原作初期は庄左ヱ門と伊助は、はっきりとした体格の描きわけがされていました。
極論をいうと、庄左ヱ門が「やせ形・長身」、伊助が「ぽっちゃり・小柄」。
伊助は20巻ぐらいまでは太り気味で描かれており、それ以降他の子と差別化がなくなってきたのが流れ。

しかし、落乱４２巻p106からの一連。
囮のためにつかまった庄左ヱ門と伊助。

複数のコマで、庄左ヱ門より伊助の方が太めです。
１コマだけ２人の位置が逆になっていますが、そこでも伊助の方が太めなので、結論。

　　　
庄左ヱ門（左）と伊助（右）の体格差。
こんな感じでしょう。

○伊助について

１年は組の夫婦。
１年は組のお父さんとお母さん。



庄左ヱ門と伊助がツートップ・・・。？？？
すみません、これは個人的に首をかしげています・・・。
理由はごくごく単純で、「は組のサブリーダーである団蔵がポジションとして宙に浮くから。」
というか、サブリーダー自体が扱い難しいんですよ。ギニュー特戦隊とか、あれだって目立っているのはリクームですけれど、実際サブリーダーはジースですし。

団庄コンビが、は組のリーダーズなのは落乱４４巻p50あたりで、原作者の気合いも見えますから否定しようもない事実ですし。

実際、団庄コンビを中心に置いた方が、1年は組全体像は考えやすい。
たとえばジャンルをかえて「ふたりはプリキュア無印」（何かと例に出すんですがこの作品）。
なぎさが団蔵でー、ほのかが庄左ヱ門でーと主役のこの2人をメインに据えると、じゃあ莉奈が虎若で、志穂は三治郎あたり？伊助がユリコ。
キャラ数が足りないので11人埋まりませんが、間違いなく彼女たちの友人が1年は組。

つまり、「1年は組」という集団のメインではなく、
ほのかとユリコ、のような「沢山存在するもののうちの一つ」視点で、庄左ヱ門と伊助象を眺めた方がよさそうです。



もっとぶっちゃけて言うと、伊助は集団の中で力を発揮するタイプではない。
集団を先頭きって引っ張ったり、集団をまとめたり、ましてや縁の下の力持ちでもない。
その証拠に、伊助がクラスの皆に指示をだしたり面倒を見たりしている場面が見当たらない。
もうほとんど無いに等しい。もしあったとしても、団蔵＆庄左ヱ門と比較できるほどの数が無い。

伊助は、決して１年は組の皆から頼られる立場ではないし、庄左ヱ門ほど周囲のことは考えれらない。
よく気がつく性格ですが、それは他人の面倒見にはまるで適用されていない。


血液型ＡＢ型という設定もそれを裏付けます。
もし、伊助が集団で力を発揮するタイプなら、間違ってもＡＢ型設定にはしないでしょう。

この路線はアニメも忠実に受け継いでいます。
伊助のメインになる話は、必ずといっていいほどピン（単独）です。彼オンリーで乱きりしんとしか絡まない。
例にあげると、8期で利吉にほれる話、11期での掃除好きの話、12期の八方斎との話（※１）。




つまり、伊助は集団の中では、間違いなく「その他大勢組」。

じゃあ、伊助はどこで力を発揮するタイプなんでしょうか。




答えは簡単です。




伊助は、対1人において力を発揮する。

言い方を変えると、普段は「その他大勢組」だが、ある限られた場面になって力を発揮するタイプ。
典型的な「いつもは目立たないけれど、いざとなると・・・」タイプ。落乱33巻から話を掘り下げます。

○落乱33巻。

庄左ヱ門がさらわれて、伊助が豹変しました（笑）。
クラスの中では目立たない伊助ですが、対庄左ヱ門になると話は別。
この辺は原作を読めば早い話なので、いちいち書くまでもないでしょう。

ただ、ここで一つ疑問が出ます。

伊助にとって庄左ヱ門とはどういう存在なんでしょうか？


長らく引っかかっていたのが、３３巻p204の伊助の台詞。
「だいじょうぶか、庄左ヱ門。」

すでに、庄左ヱ門と合流した後のこの台詞。「頑張れよ」ではなく「だいじょうぶか」。
しかし、この時点で庄左ヱ門の身に危険なものはない。
だいじょうぶ？と聞かなくとも、大丈夫に決まっています。


だいじょうぶ？


この台詞にある感情は、心配。
庄左ヱ門が無事にも関わらず、伊助は彼を心配している。

実は、この３３巻。
庄左ヱ門と合流した後の伊助は、ほとんどのコマで彼のすぐ後ろにいます。
何故後ろにいるのか？・・・・ここで生きてくるのが先ほどの台詞。

心配だから。

リーダーとして皆を引っ張る庄左ヱ門が、伊助は心配なのではないでしょうか。




庄左ヱ門は、１年は組のリーダーです。１年は組の面倒を見て、まとめあげ、そして引っ張る。
彼は「守る者」であり、伊助含む１年は組１０名は「守られる者」。
（落乱３９巻、p199なんか個人的にかなりお気に入り）
庄左ヱ門が騎士なら、１０名は姫君。

庄左ヱ門は強いんです。

３３巻でも例にもれず、クラスのリーダーとして皆を引っ張ってくれます。
彼に弱いところは見られないし、描かれない。
では、どうして強い庄左ヱ門を伊助は心配するのでしょうか。
無事で安全な彼にどうして「だいじょうぶ」と声をかけるのでしょうか。
そもそも「心配」という感情は、強者にはしない。「心配」というものは弱者に生じる感情です。

庄左ヱ門は強い。

ここは、この考え方を１８０度展開せねばならないようです。


庄左ヱ門は弱い。


伊助にとって、庄左ヱ門は強くないのではないだろうか。むしろ、弱いのではないだろうか。
弱いからこそ伊助は心配するのではないだろうか。
庄左ヱ門が本当に強いならば、伊助は心配なぞしない。
特に彼の身が安全だと分かっている限りは。

１年は組という集団の中では、庄左ヱ門は強者そのものですが、
伊助と１対１の関係になったとき、彼は弱者にまわるのではないだろうか。

むしろ落乱３３巻、強者である庄左ヱ門がさらわれる設定になったのは、彼の弱さを表現するためではないだろうか？


落乱４２巻、囮でつかまった庄左ヱ門と伊助。
この一連の会話は妙に不自然です。

P113、どうして密書の秘密を話すのが伊助なんでしょう。
いつもならば主導権を握るはずの庄左ヱ門ですが、この場においては何もしない。
全体的な台詞の量も、庄左ヱ門より伊助の方が多い。
吹き出しの位置？…でも直前のP112では何故かこの二人逆になっているんですよ。


1年は組全体でみると、庄左ヱ門は伊助含め10名を守る立場にある。
しかし対伊助になると、庄左ヱ門は守られる立場になる。

1年は組全体でみると、伊助は庄左ヱ門から守られる立場になる。
しかし対庄左ヱ門になると、伊助は庄左ヱ門を守る立場になる。



分かりやすく別のジャンルを探してみると、興味深いものを思い出しました。
「風の谷のナウシカ」（映画版）

ナウシカは、風の谷の人々を守ります。彼女は女性ですが、肉体的にも精神的にも強い。
男のアスベルでさえ彼女に守られる。ナウシカは姫という設定ですが、立場的には騎士。とにかく彼女は守ります。

しかし、あの映画の中で、唯一ともいえるナウシカを守る人物が出てくる。
ナウシカからすれば、風の谷の人々としてその人物も守る対象。
しかし、その人物は対ナウシカにおいては、彼女を守る立場にあたる。その人物は、ことあるごとに彼女と共に行動する。
指示を出し、リーダーシップを発揮するのはナウシカ、その人物は後ろに控えてサポートをする。
そして彼女に言う台詞が「無茶です、姫様！！」。



ミト。



庄左ヱ門がナウシカなら、伊助はミトおじにあたる。
（個人的にミトおじが好きなんです。要所要所で重要な立ち回りを演じている。格好いいですよね。）

○まとめ

３３巻の伊助は、庄左ヱ門が「（自分にとって）弱い者」だからこそ心配した。
助けに行く時もあれほど大げさだったのも、庄左ヱ門の弱さを示唆していると思われます。


結論として、庄左ヱ門と伊助の関係とは、




守る伊助と、守られる庄左ヱ門。




今の自分が、一番納得のいく説明が以上になります。
伊助は庄左ヱ門より強くないと落乱３３巻は矛盾してしまうんですよ。行動が説明できない。
ですが、伊助が強いのは庄左ヱ門のみにおいてであり、それ以外、つまり集団に交じってしまうと、彼は弱者になるのです。



なんか思ったのですが、
伊助が庄左ヱ門を守られないならば、庄左ヱ門は団蔵の元へいってしまいそうだな。
アニメを振り返ってそんなことを考えてしまった。
最悪。

※１アニメの伊助について
基本的に、時期によって位置づけがバラバラ。アニメオリジナルの設定があっては消えて、あっては消えての繰り返しだった。
性格も、原作のおとなしめなのとは対照的に、アニメの伊助はかなりヒステリック。そして、この性格は初期から変わっていない。

２０１０年５月時点で＞
伊助は「掃除好き」キャラ、そしてタイトル「伊助の怒り」でやはりヒステリックキャラで行くようだ。

面白いことに、伊助はあくまで「掃除好き」なだけであって、クラスメートの面倒は見ない。
むしろ１３期の庄左ヱ門で「掃除をしないきりしん喜に愛想をつかした」話があるので、
「掃除をしてよ！」とあれこれ周囲に言うのは庄左ヱ門、伊助はそんな庄ちゃんいざ知らず、１人でいそいそと掃除に励んでいるタイプだろう。

そして、アニメ伊助のうどんネタの多さはかなり気になる所である。